相続手続きにおいて、必要書類の収集は最も大変なことの一つです。その中でも戸籍謄本については、被相続人が生まれてから亡くなるまでの住所をたどっていく必要があり、とても手間がかかるものでした。
このたび、戸籍に関するルールである「戸籍法」が改正されます。改正によって戸籍謄本の収集方法がガラッと変わり、すごく楽になります。

1.戸籍とは

戸籍とは、個人が生まれてから死亡するまでの身分関係(出生、婚姻、死亡、親族関係など)を登録し、証明するための書類です。現在の戸籍は一組の夫婦と苗字を同じくする未婚の子を単位として作成されています。

戸籍は戸籍法に基づく届出により記録され、本籍地のある市区町村役場に保管されています。
そのため、相続手続きなどで戸籍謄本や戸籍抄本が必要な場合は、本籍地のある市区町村役場に請求する必要があります。

戸籍には「本籍」「筆頭者氏名」、同じ戸籍に記録されている人の「苗字」「生年月日」「父、母の氏名」「出生地」「婚姻日」などが記録されています。

「本籍」とは、戸籍が所在している場所のことです。実際に存在する地番または住居表示の街区番号まで(●丁目●番まで。●号は入りません)で自由に設定できます。

2.相続手続きにおいて戸籍収集が大変な理由

相続手続きにおいては、被相続人と相続人の関係を証明するために、亡くなった被相続人と遺族である相続人の戸籍謄本を取得する必要があります。特に被相続人の戸籍謄本については、生まれてから死亡するまでの期間のものを漏れなく取得することを要するため、取得すべき戸籍の枚数がかなりの量になることも少なくありません。

通常、被相続人は出生によって1つ目の戸籍に入り、結婚によって新たな戸籍を作ることになるため、最低でも2つの戸籍が必要となります。これに加えて、「改製原戸籍」(かいせいげんこせき、かいせいはらこせきと読みます)と呼ばれる制度自体の見直しによって、新たな戸籍に入れ替わることが何回か発生していますので、さらに取得すべき枚数は増えます。
さらに、引っ越していたり、養子になっていたり、古い民法の下で家族関係の移動があったり・・・、このようなケースでは、戸籍は膨大な量になってしまいます。

3.戸籍謄本が最寄りの市区町村役場で取得可能に

上記のとおり、戸籍謄本は本籍地がある市区町村役場でのみ取得します。そのため、従前の戸籍が、現在の住所以外の市区町村にある場合には、わざわざその役場へ行くか、郵送などによって請求する必要がありました。

このような不便を解消するため、令和元年においてこの戸籍のルールが定められている「戸籍法」が改正されました。
この改正の目玉が、「本籍地以外での戸籍謄抄本の発行」です。
法務省において、戸籍に関する新たなシステムを導入し、戸籍情報を一括管理することによって、最寄りの市区町村役場で全ての戸籍を取得することができるようになります。
これが開始されれば、大変な手間であった戸籍の収集作業が格段に楽になることが見込まれます。

4.戸籍の取得が楽になるのはいつから

法務省のホームページには、「令和5年度中の開始を予定」と記載されておりますが、具体的な時期はいまだ明らかになっていません。

令和6年から相続登記義務化もありますので、それまでには運用が開始されるのではないでしょうか。